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三日のだんご
- 富山県 JAなのはな女性部(富山県富山市)
- 2024年5月
出産を祝い ねぎらう〝だんご汁〟
三日のだんご
出産した娘へ、母の愛情がたっぷりと詰まった滋養食。
幸せを紡ぐ富山の郷土の味です。
北アルプス立山連峰の雪解け水が田畑を潤す富山市は、米の一大産地です。この地では、人生の節目に、地元産米を使った餅やだんごの郷土食が並びます。JAなのはな農産物直売所に併設するキッチンスタジオでは、JAなのはな女性部が、郷土食「三日のだんご」を作っていました。
「三日のだんご」とは、もち米粉を練っただんごと、ずいきや根菜、厚揚げがたっぷりと入ったみそ汁のことです。出産後の女性に栄養をつけて、母乳の出がよくなるようにと、産後三日めに家族が作って、食べさせた伝統的な郷土の味です。
「富山では、だんご入りの汁物をよく食べます。三日のだんごは、出産した女性の実家が作るのがならわし。娘に食べさせるためですが、鍋いっぱいに作って嫁ぎ先や親戚、近所にも配ります。出産を祝い、誕生報告を兼ねた料理ですね」
料理のいわれを教えてくれるのは、JAなのはな代表理事組合長であり女性部部長の谷井悦子さん(78)です。離れた町に暮らす母が作って届けてくれたことを、谷井さんは懐かしそうに話します。
「今でも母が作ってくれた三日のだんごが、いちばんおいしいと思っています。富山でも地域によって材料が異なります。ただ、もち米粉のだんごとずいきは、かならず入っていますよ」
母から娘への愛がこもった贈り物
谷井さんや副部長の上滝澄子さん(75)と共に、各支部のリーダーが調理を進めます。だんごを丸めつつ「鍋いっぱい作って産院に持ってきたわ」「義母も作ってくれたの」など、三日のだんごの思い出にみなさん話が弾みます。
ずいきは煮ると膨らむため細かく切って、だんごはほどよいかたさに仕上げるのがコツだそう。たまに昼食で作っている、と話す上滝さん。
「作り方も簡単です。それにだんごは、お餅よりも粘りけが少ないので、子どもから老人まで食べやすいの」
今では産院でバランスのとれた食事指導もありますが、三日のだんごは出産の喜びを込めた母から娘への贈り物。そんな愛がこもった食文化をつなげていこうと、谷井さんたちはJA祭りやイベントなどで、三日のだんごを作って積極的にPRしています。
「コロナ禍で休止していた料理教室を再開し、三日のだんごや郷土食を若い世代へ引き継いでいきたい。食文化を未来へ紡ぐことは、わたしたち世代の役目ですからね」
「三日のだんご」の作り方
材料(4人分)
- もち米粉 150g
- 干しずいき 10g
- ゴボウ 1/2本
- 厚揚げ 1/2個
- だし汁 800mL
- みそ 大さじ2
- 花がつお 適量
❶ 干しずいきは1時間ほど水につけてもどし、1~2cmの長さに切る。ゴボウはささがき、厚揚げは1~2cm角に切る。
❷ もち米粉をボウルに入れ、湯を少しずつ加えながら練って耳たぶぐらいのやわらかさに。一口大に丸め、真ん中にくぼみをつける。
❸ 鍋にだし汁を入れ、ずいきとゴボウを加えて煮る。やわらかくなったら、厚揚げ、だんごを入れる。
❹ だんごが浮いてきたら、みそを溶き入れ味をととのえる。わんに盛って、花がつおをちらす。
富山の郷土食を食べてみられ
三日のだんごはうまいっちゃ!
文=森 ゆきこ 写真=福地大亮