地域にエール!
町なかの魅力あふれる体験農園
- 和歌山県 JAわかやま 農業体験農園(和歌山県和歌山市)
- 2024年6月
農業と地域をつなぐ
町なかの魅力あふれる体験農園
組合員が園主となり農業をとおして地域と交流する「農業体験農園」。
JAが創造する都市農業の新たなカタチとは?
やわらかな日ざしに包まれた早春の圃場では、JAわかやまが支援している「農業体験農園」が開催されていました。農業体験農園は、組合員が園主となって運営。畑の貸し出しのほか、栽培計画や種苗の準備、利用者への技術講習や栽培指導をします。
「まず畝に保温や防草用のシートを張りましょう。種を植える所には穴をあけます」
初めての利用者にもわかりやすいよう作付け講習をするのは、農業体験農園「太田ファーム」園主の太田政文さん(67)です。
政文さんが農業体験農園を始めたのは、平成三十年のこと。定年退職後、兼業だった水稲栽培に注力。農業で地域と交流したいと考え始めた頃でした。そんな折、JAの取り組みを知り、即座に参加を決めたそう。
「ぼくがやりたいことをJAがやっていた(笑)。さらに、栽培技術指導やコミュニティーづくりの提案、利用者募集のサポートもあって心強かった。農家と地域を結ぶ取り組みだと実感しましたね」
七年めを迎える太田ファームは、利用者の半数がリピーター。子育て世代からシニアまで幅広い世代が集います。
五か所で開園 大阪の利用者も
JAが推進する農業体験農園は、平成二十七年度に連携した和歌山大学との共同研究から誕生しました。
「JA職員が社会人講座を受講。学内外で“まちづくり”の議論を重ねるなか、大学と都市農業の振興策を共同研究することになりました」
そう話すのは、JAわかやま営農生活部の池田信義さん。東京都練馬区の農業体験農園をテーマとして視察や研究を重ね、農地の有効活用や所得向上、緑化景観や農業理解など、生産者だけでなく市民にもメリットがあることから、実践すべく動きだします。
しかし、和歌山市で農業体験をしてみたいという需要がどれほどあるのかとの疑問も。そこでJAでは、練馬区の園主の講演会や利用者の意見を公開した説明会を実施。すると組合員から、ぜひやってみたいとの声が上がります。
「そこで二十八年、和歌山市に初開園しました。一軒から始めて、今では五軒のファームに。計百五十区画にまで拡大しています。市内だけでなく、大阪からの利用者も。着実に広がっていますよ」
講習が終わった農業体験農園には、鋤をふるう利用者を見守る政文さんの姿が。コロナ禍での社会制限もなくなり、利用者との交流会を復活していきたいという政文さん。
「夏はバーベキューをしたり、冬は栽培したダイズをきな粉にして餅つきしたり。ジャム作りが得意な人もいるので、ワークショップもできればいい。“農を通じて新たな楽しみが広がる”そんな交流の場にしていきたいです」
文=森 ゆきこ 写真=前田博史