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小麦餅

  • 奈良県 JAならけん女性部(奈良県桜井市)
  • 2024年7月

田植えの労をねぎらい 秋の豊作を願った

小麦餅

田の神様に田植えが無事に終わったことを感謝。
疲れた体を休め豊作を祈願して食べた小麦餅。
今に受け継ぐ“まほろば”の味です。

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 昔から神の山として尊ばれてきた三輪山を望む奈良県桜井市。“まほろば”の都として、その豊かさや美しさが記紀神話で伝えられてきた地域です。
 そんな奈良盆地の南東部に、農事と深い関わりを持つ郷土食「小麦餅」があります。さなぶり餅、半夏生餅とも呼ばれ、田植えの頃には欠かせない味だったそうです。
「さなぶりとは、田植えを終えた祝い。昔は、農作業の無事を感謝して小麦餅を作り、神様にお供えしたり、半夏生といって夏至の頃に作って骨休めにしたり。その年に収穫した小麦を入れて、田植えの疲れをねぎらい、豊作を祈願したと言われています」
 小麦餅の由来を教えてくれたのは、JAならけん桜井しき・字陀地区女性部部長の中野佐代子さん(77)。中野さんは、各支部の支部長七人で運営するSweets club“八重山”のメンバーです。令和三年四月一日に設立してから、月一回は集まって地域の特産野菜で郷土食や菓子を作っています。また、それらを伝える活動でも大活躍です。
 今月の活動は、郷土食の小麦餅作り。朝早くからメンバーが、JAの調理スタジオに集まって気合いを入れます。

年配者は懐かしく若者にも大好評

 中野さんの指示の下、調理が始まります。もち米を入れた蒸し器を火にかけて、時間差でその上につぶし小麦(押し小麦)をのせて蒸していくと、特有の香ばしい匂いがフワッと広がります。
 蒸しぐあいを確認しながら、八重山のリーダー安田淑子さん(73)は言います。
「小麦を入れることで、プチプチとした食感や香ばしさが加わっておいしいの。農事の合間に作っていた餅なので、作り方はとても簡単です」
 蒸しあがったら、もち米とつぶし小麦をまとめて、餅つき機でついていきます。
「好みの柔らかさに仕上がるように、水は数回に分けて入れるのがコツ」と、中野さん。
 熱いうちに平たくまとめて、当地産ダイズのきな粉を、たっぷりとまぶして完成です。

 作りたての小麦餅をほおばりながら「素朴な味よね」「孫のおやつにいいの」などと、みなさん盛り上がります。六十代以上の世代でも、今では思い出の味になっている、と中野さんは言います。
「JAのイベントでお振る舞いをしたことがあって、年配者は『懐かしい』、若い世代も『おいしい』と、どちらも喜んでくれました。これからも地域の味として“小麦餅”を守っていきたいですね」

「小麦餅」の作り方

材料(80個分)

  • もち米  1升
  • つぶし小麦  800g
  • 水(餅つき用) 500mL
  • 塩①  大さじ1
  • きな粉  150g
  • 砂糖  80g
  • 塩②  小さじ3/4

❶ もち米は前日(または6時間前)に、洗って水につけておく。つぶし小麦は、かるく洗って15分ほど水につけて、ざるに上げる。

❷ 水けを切ったもち米を蒸し器に入れる。蒸しあがる直前、つぶし小麦をもち米の上にのせ、さらに20~30分蒸す。

❸ 蒸しあがったら、餅つき機で約20分つく。塩①を加え、好みの柔らかさになるまで水を数回に分けて入れてつく。

❹ つきあがった餅をボウルに移す。熱いうちに一口大にちぎり、平たくまとめる。砂糖と塩②を加えたきな粉にまぶす。

郷土食を守っていかなあかん

おやつにピッタリやで!

文=森 ゆきこ 写真=前田博史

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