地域にエール!
“リース農場”で羽ばたく新規就農者
- 山形県 JAやまがた 野菜・果樹団地(山形県山形市)
- 2025年1月

産地の維持に効果抜群!
“リース農場”で羽ばたく新規就農者
高齢化が進む産地。担い手を育成するためJAが園芸団地施設を造成して貸し付けました。
いまでは、作物も人もたわわに実っています。
山形県の中部東に位置し、米を中心に果樹や野菜などさまざまな園芸作物の生産地として知られるJAやまがた管内。しかし、この地でも生産者の高齢化には歯止めがかからず、生産者や栽培面積の減少が続いています。
そんな状況を打開するべく、JAでは平成二十九年から野菜・果樹団地の造成をスタート。山形市内の南沼原・飯塚地区に八十アール三十二棟の野菜ハウス団地を建設し、翌年の三十年には七十アール二十八棟を増設しました。

さらに同年、本沢地区にシャインマスカットの果樹ハウス団地を建設。翌年の令和元年には、大郷・出羽・明治地区にモモ栽培の果樹団地を造成しました。
現在までに、野菜ハウス団地は二百十五アール八十六棟が完成し、十七人の生産者がキュウリを栽培。果樹ハウス団地は百七十アールとなり、果樹団地は令和二~三年に増設されて四百二十アールへ拡大。果樹全体で二十人が栽培に取り組んでいます。

産地の特徴や人的財産を活用
野菜・果樹団地は、JAが園芸団地施設を整備して貸し付けるシステムで「JAリース農場方式」といわれます。初期投資を抑え、新規就農をしやすくしています。導入について、JAやまがた営農経済部の屋島正人さんは「産地を維持するため」と話します。
「野菜ハウス団地のある地区はもともとキュウリの産地。果樹の団地もブドウ、モモの栽培エリアに造成されています。さらに山形市へ働きかけ、農地の貸借条件を緩和してもらうなど、まずは農家として独り立ちできるよう支援してきました」
団地を利用する担い手の約六割は新規就農者です。栽培実績のある土地で、ベテラン農家やJAの指導を受けられるメリットは大きく、昨年度は野菜ハウス団地のキュウリ販売額が一億円を超えるなど、農業振興にひと役買うまでに成長しています。

令和元年から、野菜ハウス団地を利用する田中康裕さん(37)も新規就農者の一人。現在は、十七アールのハウスでキュウリを生産するほか、別所に借りた八十アールの圃場でミニトマト、ナス、ピーマンなどを栽培しています。
「収量アップを求めれば、おのずと品質も上がる。ただ、天候など環境は毎年変わるため、同じことを続けていてはいけない」


そう断言する田中さんは、仕立てや液肥のタイミングなどを独自に工夫。さらに秋冬にかけての作物ローテーションも構築し、いまや従業員三人を年間雇用しています。
産地の特徴や人的財産を活用し、新たな担い手を育成してきた園芸団地施設。その手法に注目が集まっています。
文=井上宏美 写真=鈴木加寿彦